一生使えるトリマー
同じ住宅をまた売ればよいのです。
そのころには、さらに住宅価格は上がっているでしょう。
こうして、2004年から急増したサブプライムローンは、新規に契約された住宅ローンのなかで2割を占めるようになりました。
それまでは1割すべての前提は、住宅価格が上がり続けることでした。
サブプライムローンが急増した○年から2年が経った○年になると、先ほどのような最初の2年は元本の返済が不要というローンを組んでいた人たちは、元本の返済を始めなくてはならなくなります。
案の定、利払いが滞ったり、払えなくなったりして、破産に追い込まれるケースが出てきます。
家を手放す人も増えてきました。
もう一つは金利の上昇です。
サブプライムローンが急増した似年は、超低金利時代で政策金利のFFレートは1%。
○年6月から政策金利が継続的に引き上げられていき、主要○都市の住宅価格がピークをつけた○年6月初めにはFFレートは5.0%にまで上がっていました。
6月末には○%へさらに上がっています。
○年からサブプライムローンを借りた人のなかには、先述のように3年目に金利条件の見直しが行われる人たちがいました。
ちょうど、その3年目の○年に政策金利が大幅に上がったので、住宅ローン金利も大幅に上がり、ローンを払えない人がさらに急増したのです。
○年秋になって住宅価格が下がり始めると、不動産会社は手持ちの物件を早く売ろうと、より安い価格をつけるようになります。
サブプライムローンを借りて購入した住宅を担保にして、支払いの足しにしていた不動産担保融資も、もう受けられなくなってきました。
もともと金融商品には、リスクのヘッジ(回避)の機能があります。
例えば、株価が落ちて損失を被りそうだと思えば、特定の相手に対して株を高く売る権利を買っておけば安心です。
必要がなければ使わなくてもよい保険のようなもので、権利だけの売買ですので、値段も安く設定されています(「オプション」という金融派生商品の例です)。
つまり、金融商品は使い方によっては、自分の金融資産を守ることもできるのです。
債務担保証券(CDO)も、本来はサブプライムの住宅ローン担保証券(MBS)のリスクを軽減するように設計されていたはずです。
世界の投資家がCDOを購入するにあたっては、必ずしもローリスク・ローリターンの投資を目的にしていたわけではありません。
リスクヘッジの発想ではないのです。
世界では低金利が続いていて、どこへ投資しても儲からない。
リスクが高いのはわかっているが、高い利回りの金融商品がなんとしてもほしい。
そこで投資会社がその希望に合わせるようにCDOをつくり、格付け会社を呼んできて、自分たちに都合のよいように高い格付けをさせて売り出した、というのが真相なのです。
ローリスク・ハイリターンの証券化商品なんて、冷静に考えれば誰が見てもおかしいとわかります。
どこかに誤魔化しが潜んでいます。
ですから、証券化商品をつくるにあたって高度な金融工学の技術を駆使したといっても、実際には、最初からハイリスクなものにつくられていたとしか思えません。
おそらく、CDOをつくった人たちは、早く売って早く逃げることを考えていたのでしょう。
初期に売りに出した人たちは、サブプライムローン問題が拡大する前に、すでにCDOをすべて売却し、撤退していたという噂もあります。
CDOは証券化されたサブプライムローンを集めるなどして、巧妙に再証券化したものですから、もとの一つひとつの証券に遡って評価し直し、もう一度まとめたときに全体でどのような評価になるのかを理解するのは、大変骨の折れる作業です。
買い手が購入時にリスクを見抜けないのは当然です。
実際、サブプライムローン関連の証券化商品を大量に抱えてしまった投資家たちが、いまでも正確に損失を把握できず、不安だけを募らせている現状もよくわかります。
CDOをつくる側にいた人たちには、それぞれの商品がどれほど危ないのか、わかっていたと思います。
サブプライムローン問題が表面化してから、アメリカの格付け会社はサブプライムローン関連の証券化商品の評価を見直し、格付けを下げたのは第1章でも触れた通りです。
トリプルAと信じていたものが格下げされただけでも、損害が発生し、疑心暗鬼に陥ります。
さらにリスクが読みきれないのは、住宅価格の下落に連動したリスクがあり、しかも住宅価格が下がり続けているためです。
損害がさらに広がる可能性があるのです。
サブプライムローン関連の証券化商品には、もう一つ、重要な仕掛けがあります。
先ほど述べたように債務担保証券(CDO)はそのリスクが理解しにくいため、ほとんどの場合、一種の保険がつけられていました。
CDOに損失が発生した場合、それが契約によって定められた形の損失であれば、保険会社がその損失分をすべて補償してくれるのです。
もちろん、保険会社に保険料を払う必要があります。
つまり、こういうことです。
ある証券化商品はトリプルAの格付けになっている。
購入したいが、本当はリスクが高いのではないかと心配になる。
それならば、保険料を余分に払ってリスクをヘッジ(回避)しておけばいい。
これがクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれるものです。
例えば、投資家である金融会社Aは投資会社B(CDOの発行元)から、住宅ローンや消費者ローンなどの債権からつくられたCDOを買ったとします。
もし、CDOを構成している住宅ローンが未払いになったり、CDOの発行元にあたる会社Bが倒産したりすると、CDOに損失が発生します。
会社Aは購入したCDOの損失をそのまま時価にします。
保険料は通常、保証金額の数%、もろちん、そのパーセンテージはCDOを構成しているローンの貸出先の信用度、さらにはCDO発行元である会社Bの信用度などによって決められます。
つまり、そのCDOが、リスクが相対的に高いと判断された場合は、保険料も相対的に高くなるわけです。
住宅ローンなどの債券は長年にわたるものが多いのですが、保証期間はあまり長期だと保険会社もリスクが大きすぎますから、通常は5年程度の契約です。
何事もなければ、保険会社Cはこうした形でいろいろな会社さて、CDOに損失が発生したらどうなるでしょうか。
CDSを保有している会社Aはそれを保険会社Cに申し立てることで、損失分を回収できます。
したがって、会社Aは時価会計に損失分を計上しなくても済み、自社の経営に悪影響を与える心配はありません。
つまり、リスクはCDSを購入した段階で、回避されているわけです。
一方、保険会社Cは会社Aに保証金額を払う代わりに、CDOの発行元の会社Bに対して、CDOの元本を請求する権利を手にします。
ただし、そのCDOは損失を出していますから、つまりは保険会社Cが損失を負うことになります。
こうして起こる損失のトータルよりも保険契約全体から上がる利益が多ければ、保険会社としては順調に経営が行われていることになります。
実際には、CDOがつくられるときに、投資家に購入してもらいやすくするため、最初からCDSを組み込むことが広く行われています(これをシンセティックCDOといいます)。
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